院長ブログ14  ニキビ治療2024 美容医療も含めて | 新宿区西新宿の皮膚科・内科 | 西新宿サテライトクリニック
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院長ブログ14  ニキビ治療2024 美容医療も含めて

 2023年に日米のニキビ治療ガイドライン 1)2)が改訂されましたので、これらをもとに最新のニキビ治療を考えてみたいと思います。また、機器を用いたニキビあと治療(美容医療)の動向についても触れたいと思います。
 ニキビ治療を選択するにあたっては、まず自分のニキビの重症度やタイプ、肌質を理解しておくことが重要です。顔面の一部に赤ニキビが時々できる程度なのか、顔面全体に赤ニキビや膿疱(ウミ)が繰り返しできるのか、大きく深いニキビがしこりになって治りにくいのか、ニキビあとがひどく皮膚が凹凸になっているのか。また、肌質についても、ニキビ薬を外用しても荒れないのか、アトピー性皮膚炎などが背景にあり、肌が弱く外用するとすぐに乾燥や刺激感を感じるかによって治療法が異なります。ニキビの患者様を数多くみていると、軽症ニキビなのに重症用の高額な美容医療を受けている人や、肌が弱いのにもかかわらず肌荒れを起こしやすいニキビ薬を使っている人を時々経験します。以下の文章を読んで治療法について再認識してください。
 急性期(赤ニキビ:紅斑・丘疹・膿疱)の治療
外用・内服ともに抗菌薬が主体になります。院長ブログ13にも書いたように、耐性菌が最近増えているので、ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)の内服とニューキノロン系外用薬(アクアチム®、ゼビアックス®)をお勧めします。肌荒れしない人は非特異的な抗菌作用のある過酸化ベンゾイル(ベピオ®)や、クリンダマイシンがさらに添加されたデュアック®も使用することができます。将来的な耐性菌の発生を考えると、抗菌薬を漫然と長く内服・外用することは良いことではありません。しかし、アトピー性皮膚炎など荒れしやすい肌質の人は、過酸化ベンゾイルを少し試した上で、だめなら抗菌薬治療を続けるしかないと思います。
 慢性期の治療
赤ニキビが落ち着いた時、あるいは急性期の同時併用療法として、ニキビの予防や白ニキビ、ニキビあとの治療として次の2つの薬剤をお勧めします。アダパレン(ディフェリン®)は角化抑制作用があり、使用1か月後くらいに効果があらわれます。過酸化ベンゾイル(ベピオ®、デュアック®)は非特異的抗菌作用と角層剥離作用(ピーリング効果)があります。2つの薬剤の合剤としてエピデュオ®もあります。いずれの薬剤も肌荒れしますが、どちらかだけに荒れる人もいます。私の個人的な印象としては、荒れる頻度と重症度はエピデュオ®>ベピオ®=デュアック®>ディフェリン®です。塗る場所を限定して何度か試してみてから本格的に広い範囲に塗ってください。用法は1日1回夜に外用し、朝に洗い流しますが、荒れる場合には2-3日に1回外用することもできます。乳液を塗った上から外用することもできますが、効果は落ちます。過酸化ベンゾイルはもともと化学薬品で漂白剤です。強い酸化作用があるので付着すると衣類が色落ちしますので注意してください。また他の薬剤に影響を与えて酸化変性させますので、クリンダマイシンが添加されたデュアック®は冷蔵保存になっています。しかし、3か月以内に使い切る場合には常温保存で問題ありません。
 重症ニキビの治療
重症ニキビ(集簇性ざ瘡)の治療は上記の抗菌薬とアダパレンなどを組み合わせて行うことになりますが、十分ではありません。米国ガイドライン2)ではイソトレチノイン(アキュテイン®、イソトロイン®など)の内服がガイドラインで強く推奨されていますが、日本では認可されていません。ビタミンA誘導体で、内服すると体内に蓄積し、催奇形性があります。将来的に日本でも認可される可能性がありますが、現時点でも並行輸入により美容クリニックで処方されています。現在は認可されていないので、副作用が生じても個人責任です。軽症ニキビで内服している人を経験しますが、重症ニキビの人だけが対象です。ほかに効く薬がないので、やむなく飲むイメージです。重症ニキビの人は、次に述べる機器による治療を併用すると効果が上がります。
 ニキビあとの治療(機器を用いた治療)
いろいろな酸を用いたケミカルピーリングは、アダパレンが保険診療で処方され、機器によるニキビあと治療も進歩した現在では実施するメリットがないと考えます。機器を用いて赤ニキビの治療もできますが、高額であり、通常のニキビの治療は保険診療で済ませるのが、効果、副作用、価格の面から勧められます。機器による治療はあくまで重症ニキビの併用療法として、あるいはニキビあとの治療が主目的です。機器による治療は、ニキビあとがくぼみとなって凹凸があるタイプが得意です。ケロイド状に盛り上がっているものには逆効果になることもあり、保険診療で、ステロイド(ケナコルト®)注射を定期的に行うのが効果的です。
 ここ数年、ニキビあと治療によく使われている機器にはフラクショナルレーザーとニードルRF(POTENZA®など)があります。フラクショナルfractionalとは部分的という意味です。皮膚全面にエネルギーを照射するのではなく、ドット状に一部だけに深く照射し、ダウンタイム(回復するまの時間)や炎症反応を少なくして効果を下げないように工夫した機器です。使う波長によりいろいろな機器があります。RFは高周波(radiofrequency)の略で、ニードルRFは多数の細かい針を皮膚に刺し、電気メスの原理で真皮内の組織だけを焼くというものです。 文献は引用しませんが、いずれの方法もほぼ同等な効果が報告されています。方法により施術後の痛み、炎症、ダウンタイムが少し異なるので、話をよく聞いてから治療を受けてください(当科では実施していません)。
 その他の治療
米国ガイドライン2)では経口避妊薬ピル(エストロゲン・プロゲステロン製剤)も抗男性ホルモン作用から推奨されています。イソトレチノイン内服では避妊が必要なので、両方の目的で処方されるようです。避妊が主目的で内服するのは問題がないでしょう。ただし、副作用として血栓症があり、血液が固まりやすくなるので注意が必要です。利尿薬であるスピロノラクトン2)を抗男性ホルモン作用から内服している人を時に経験しますが、抗男性ホルモン作用をだすには高用量が必要で、作用も不確定なので推奨しません。漢方薬は臨床試験が不十分で、コストパフォーマンスも悪いので推奨しません。米国のガイドライン2)には当然ですが、漢方薬の項目自体がありません。
ビタミン剤、特にB群、Cを内服している人がいますが、ニキビに有効であるとのエビデンスはありません。ガイドラインでも推奨していません。血糖が上がりにくい炭水化物の食事(low-glycemic index diet)がニキビを抑制するとの報告がありますが、不確定です2)。

文献
1)尋常性ざ瘡・酒さ治療ガイドライン 日皮会誌 2023; 133: 407-450.  
2) J Am Acad Dermatol 2024 Jan 30.  

                         2024/03/01西新宿サテライトクリニック 坪井 良治
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