水虫は白癬菌というカビによって起こる感染症です。ヒトの皮膚(角層)に取り付いて感染しますが、からだの中には侵入しません。水虫は全身皮膚のどこでも生じますが、代表的なのは足水虫です。足水虫は不衛生の代表のように思われがちですが、そうでもありません。暑くジメジメした季節に感染しないか心配、家族に水虫の人がいるという人もいるでしょう。水虫にならないための予防策について考えてみます。
水虫は医学的には白癬と呼びます。俗称としては、手足にできたものを「水虫」、からだにできたものを「ぜにたむし」、陰部にできたものを「いんきんたむし」、頭にできたものを「しらくも」と呼びます。足に水虫ができるようになったのは人が靴をはくようになってからで、もともとは頭にできることが多かった病気です。水虫菌はヒトの皮膚(角層)に取り付いて、数日経って感染が成立します。
わが国における足水虫の頻度は人口の21.6%です1)。つまり、水虫菌はどこにでもいて、だれでも感染する可能性がある病気です。水虫に最も感染しやすいのは家庭内です(50%)。足ふきマットだけで水虫が感染するわけではありません。すべての床や畳の上に水虫菌がいますので、家族全員が治療することが大切です。また、公共の床にも無数の水虫菌が付着しています。できるだけ靴下をはくようにし、素足になった場合には帰宅後に必ず洗うかタオルで拭き取ってください。プールやゴルフ場、温泉・銭湯の更衣室も感染しやすい場所です。自分の靴下をはく前に、足の裏をタオルでこするようにふき取ってください。水虫は不潔にしているからなるわけではありません。水虫になりやすいかどうかは遺伝的に決まっています。水虫菌のなかでもTrichophyton rubrumという菌種は人から人に感染していくため、太古の昔から生き残っていることを考えると優性(顕性)遺伝傾向があります2)。つまり、水虫は遺伝的なつながりがある親子で感染しやすく、夫婦間では感染しにくいのです。両親のいずれかに足水虫や爪水虫があると、その子供は遺伝的にも環境的にも水虫になりやすくなります。 足に水虫菌が接着して数日間放っておくと感染が成立します。毎日、自宅で足をよく洗って清潔にしてください。足底と足指の間がジメジメしないようにすることが大切です。足の指と指がくっついていて指の間がふやけやすい人は5本指の靴下がお勧めです。毎年夏に水虫が悪化する人は、初夏から予防的に週1~2回、足全体に水虫薬を外用しておくと予防できます。家族内に水虫の人が複数いる場合には、全員が同時に治療しましょう。少なくとも1週間外用すると排菌しなくなり、他の家族にはうつさなくなります。それから室内を拭き掃除して除菌しましょう。いっぽう、水虫薬を外用しても良くならない人は水虫でない可能性が高いので、皮膚科クリニックを受診して水虫の検査をしてもらってください(院長ブログ29)。
文献
1)真菌症診療ガイドライン2019 日皮会誌 2019; 129: 2639-2679.
2)J Am Acad Dermatol 34: 302-304, 1996.
2025/10/06西新宿サテライトクリニック 坪井 良治
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