漢方医ブログ㉑ 麦門冬湯(ばくもんどうとう) | 新宿区西新宿の皮膚科・内科 | 西新宿サテライトクリニック
お知らせ NEWS

漢方医ブログ㉑ 麦門冬湯(ばくもんどうとう)

 麦門冬湯は3世紀の『金匱要略』に出てくる処方で、麦門冬という生薬が効果の中心となる漢方薬です。麦門冬はユリ科の植物で麦とは全く関係がなく、生薬にする根の部分が麦の穂の形に似ているためという説があります。麦門冬は鎮咳去痰作用に優れ、特に風邪などを引いた後に長引く咳(専門的には感冒後咳嗽と言います)によく効くため、冬場のこの時期には特に頻用・重宝する漢方薬の一つです。

 麦門冬湯の鎮咳作用は、一般的に用いられる現代医薬の鎮咳薬のそれとは異なります。現代医薬は主として咳を起こさせる神経の中枢に働きます。咳を鎮める作用は強いですが、その影響で便秘になることがよく経験されます。一方で麦門冬湯は気管支に分布する末梢神経に働いて咳を抑えるため、神経の中枢に影響は及ぼさず便秘をきたすこともありません。むしろ現代医薬の鎮咳薬と併用することで、便秘にならずに鎮咳効果を高めることができ有用と考えられます。現代医薬と漢方薬をうまく組み合わせることで、薬の効果を最大限に高めかつ副作用を最小限にすることは、他国の医療現場では受けることのできない日本の医療ならではの恩恵と考えられます。

 咳止めとしての作用以外に麦門冬湯はのどや体を潤す作用もあり、そういった意味でも乾燥の強まる冬の時期に向いた漢方薬と言えるでしょう。風邪や気管支炎に限らず咳き込みやすいなど咳が気になるこの季節、麦門冬湯を試してみてはいかがでしょうか。