デュピルマブ(デュピクセント®)が日本で発売されて8年近く、当院で治療を開始して3年半経過しましたが、その優れた効果と安全性から重症アトピー性皮膚炎の治療が劇的に変わりました。当院での治療実績については、「院長ブログ12 デュピクセント®による治療実績(2026)」を参照してください。デュピルマブの優れた治療効果で、当院では最近デュピルマブ治療を終了して、通常治療(外用薬などによる保存的治療)に移行する人が増えています。ここでは、どのようにすれば止められるのか、また再悪化しないためにはどのようなことに気を付ければ良いかについて考えてみたいと思います。デュピルマブをそろそろ止めたいと考えている患者様に、出口戦略について情報提供したいと思います。
2022年7月から2026年1月までの3年半の間に、アトピー性皮膚炎と結節性痒疹を対象に、当院でデュピルマブの注射を受けた人は135人でした。そのうち当院を含め連続して16週間以上経過観察できた108人について有効性を解析しました(院長ブログ12)。有効性や副作用の解析については、院長ブログ12に詳しく記載しているので参照してください。ここでは、長期に注射を継続した人や、最終的にデュピルマブを止めることができた人につて解析しました(添付表)。

EASI(Eczema Area and Severity Index)はアトピー性皮膚炎の皮膚症状を定量的に評価する指標です(0=皮疹なし~ 72= 皮疹最重症)(院長ブログ7)。EASI 75(90) とは治療前後でEASIが75%(90%)以上改善した人の割合です)(添付表)。解析の結果、EASI 75 達成率(皮膚症状の程度が治療前の1/4になった人の割合)は 95.4%(103人/108人)でした。このうち副作用中止の4人とコンプライアンス不良の5人を除くと、100% %(99人/99人)でした。さらに、12か月以上治療した人のEASI 90 達成率は、副作用中止とコンプライアンス不良を除くと 98.6%(69人/70人)、EASI 95達成率は78.6%(55人/70人) でした。全体的な薬剤の印象としては、重症度にかかわらず効果が安定しており、効果は投与期間に比例して高まり、コンプライアンスが悪い人(注射間隔が長く不規則)を除いて経過中に悪化する割合が少ない。治療期間が1年を越えると、さらに症状は安定し、痒みもなくなります。
寛解とは治療によって症状が長期にわたり、ほとんどないか、落ち着いた状態を指します。ここではEASI 1以下を寛解状態として定義します。完全に治癒したということではありません。当院で半年以上(3か月ごとの受診で3回以上)にわたりEASI 1以下を維持できた人には、デュピルマブ注射の終了をお勧めしています。ステップとしては、まず3週間に1回の注射にする。特に悪化しない場合には4週間に1回の注射にして、それでも悪化しない時に中止します。その間、抗ヒスタミン薬の内服と白色ワセリン外用は継続し、紅斑や痒みが少しでもある時はステロイドなどの外用薬を併用します。これらの手順を踏んで、デュピルマブを終了できた人は23人でした。以後来院しなくなった人が5人、以後も3か月に1回受診している人が18人でした。終了できた人の治療前平均EASIスコアは26.2で、軽症ではありません。終了までに要した注射期間は平均18.4か月でした。保存的治療に移行した18人のその後は、現時点で平均観察期間が5.1か月であるため、観察期間が18か月の人もいますが、さらに最低半年は観察しないと断定的なコメントはできないと思います。しかし、現時点の観察では、少し症状が悪化した人が多いものの、EASIが5を超える人はおらず、全員がEASI95を維持できています。以上をまとめると、デュピルマブは非常に優れた注射薬で、2週間ことに規則正しく1年以上注射すれば、ほとんどの人で症状が10%程度に抑えられます。また、平均で1年半を要しますが、EASIが継続的に1以下になれば、注射を終了しても、継続して良い状態を維持することか可能です。ただし、必須条件として、抗ヒスタミン薬の内服とステロイド外用薬などの外用、白色ワセリンで継続治療することが重要です。
デュピルマブを終了、離脱する方法について定まったルールはありませんが、当院では以下のような方法を提案しています。治療開始時のEASIスコアが16~20くらいの中等症の人は早めに症状が落ち着いて1年くらいで終了することも可能です。しかし、治療開始時のEASIスコアが30以上の人や顔面頚部の皮疹がひどい人は、2年程度の隔週注射が必要です。最終的にEASIが1以下になり、この状態が半年以上続いた場合には、注射間隔を3週間に1回に、さらに1か月に1回に広げて、痒みや皮疹が悪化しないことを確認してから注射を終了します。再悪化した時のために1本は予備として残しておいた方がよいと思います。その後も抗ヒスタミン薬の内服と外用薬、白色ワセリンを継続し、少なくとも3か月に1回は定期的に受診してもらいます。痒みが急激に再燃した場合や、季節性に悪化して、保存的治療では寛解が維持できない場合には、再度デュピルマブの注射を行うことになります。ただし、最終注射からかなり時間が経過している場合には、アナフィラキシー症状などの副作用が現れる可能性があるので、再開1本目は受診しているクリニック内で自己注射した方が安全と考えます。
再悪化、再燃を防ぐための注意点としては以下のようなことが考えられます。生活環境からアトピー性皮膚炎の悪化因子を排除して、ストレスの少ない余裕のある生活環境を維持することが重要です。悪化因子として予測されるのは、乾燥、発汗、過剰な洗浄、過剰な空調、花粉症、接触皮膚炎、アレルギー物質の摂取、虫刺され、ダニ環境、ペット飼育、感染、不眠、精神的ストレス、手術・外傷、体内への異物・タンパク混入などです。 さらに重要なことは、離脱に成功した場合でも、抗ヒスタミン薬の内服と白色ワセリンの外用は継続し、皮疹の状態に応じて、ステロイド・非ステロイド外用薬を継続することです。また、季節的な悪化因子の有無により、治療内容にメリハリを持たせ、症状に応じた薬物治療を行うことが重要です。
2026/02/16西新宿サテライトクリニック 坪井 良治
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