院長ブログ4 オルミエント®(バリシチニブ)による円形脱毛症の治療
お知らせ News

院長ブログ4 オルミエント®(バリシチニブ)による円形脱毛症の治療

オルミエント®(バリシチニブ)に円形脱毛症の適応が追加され、アトピー性皮膚炎と同様に治療ができるようになりました。オルミエント®は国際的な臨床治験で治療効果が証明された円形脱毛症に対する初めての内服治療薬です。

内服治療ができるのは、15歳以上の慢性期の円形脱毛症(症状が出始めて6か月以上経過して安定している)の患者さんで、脱毛面積が被髪頭部全体の50% 以上の人です。全頭型や汎発型も適応になります。治療効果は高く、ウィッグなしで生活できるようになる可能性があります。一方で、免疫抑制作用のために感染症や、まれですが重篤な副作用を生じる危険性があります。また、治療費が高く、保険診療のもとでも月5万円前後(3割負担の場合)の自己負担が発生します。

最近発表された2つの国際臨床試験のデータ*によれば、合計1200名(平均年齢約38歳、平均脱毛面積85%)が参加しました。バリシチニブ4mgを9か月間内服した時、39%(第2試験36%)の人が脱毛面積20%以下(ウイッグをつけなくてもなんとか隠せるレベル)になりました。その効果は内服1年後まで増加しました。主な副作用はニキビ、ヘルペスなどの感染症やクレアチンキナーゼやコレステロールなどの血液検査の異常でした。

オルミエント®は関節リウマチやアトピー性皮膚炎の患者さんですでに使用されています。これらの疾患の治療では、まれではありますが重篤な副作用が報告されています。たとえば、肺炎などの重篤な感染症、血球系細胞の減少、肝機能障害、脂質代謝異常、心血管系事象、静脈血栓塞栓症、間質性性肺炎、消化管穿孔、悪性腫瘍などです。これらの副作用は65歳以上の人や基礎疾患のある人で増加すると報告されています。また、バリシチニブは腎臓で排泄されるため、腎機能が悪い人にはお勧めしません。このようにオルミエント®は円形脱毛症に対して治療効果の高い薬剤ではありますが、内服治療を開始するにあたって副作用を含め薬剤の特徴を十分理解しておくことが必要です。

治療はいつでも始められますので、急ぐ必要はありません。軽症の患者さんはこの治療法を必要としません。また、中等度の患者さんは局所免疫療法をためしてみて、その反応が良くなかった場合に検討してみるのがよいと思います。オルミエント®の治療効果を判断するためには、副作用がない限り、少なくとも1年間程度は内服することをお勧めします。しかし、いずれの治療法も対症療法です。治療を中止すれば数か月後に脱毛状態は元に戻ってしまいます。また、免疫細胞(リンパ球)による攻撃は時期により強弱があり、半年間待つと治療効果が良くなることも経験します。最終的な治癒は免疫細胞による攻撃が消失した時に得られます。

来年にはやや作用点の異なるJAK阻害薬が発売される可能性があります。また、すでにアトピー性皮膚炎で使用されている注射薬デュピルマブにも円形脱毛症に効果を認める場合があります。治療方法を適宜変更してみるのも一案です。

*N Engl J Med 2022; 386: 1687-1699.