院長ブログ6 脱毛症に対するミノキシジル少量内服
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院長ブログ6 脱毛症に対するミノキシジル少量内服

ミノキシジルを含有する外用育毛剤は、日本ではリアップ®などの名前で広く使用されています。ミノキシジルはもともと内服降圧薬として開発され、その副作用に多毛が多かったことから外用育毛剤に転用されたものです。しかし、米国を含め内服薬が発毛目的で認可されている国はありません。しかし、日本国内では並行輸入された後発医薬品が通販などで販売されています。副作用のある薬剤であるため改めて注意喚起します。また最近の海外症例報告では、ミノキシジルの少量内服が発毛効果と副作用のバランスが良いと報告されていますので情報提供します。

ミノキシジル(Loniten®)は米国などでファイザーから発売されている降圧目的の内服薬です。Loniten® (2.5mg, 10 mg錠)は体液を貯留し、急速に血圧を下げますが、効果/副作用のバランスが悪い薬として発売元からも高く評価されていません。頻脈、心膜液貯留や心タンポナーデなどをひき起こす可能性があるとの警告も出ています。

ミノキシジルの後発医薬品は世界中で製造・販売され、適応外使用で脱毛症治療を目的に内服されています。しかし、男性型・女性型脱毛症や休止期脱毛症に対するミノキシジルの少量内服については大規模な二重盲検比較試験は行われていません。女性型脱毛症に対するミノキシジル0.25mg/日(14人)と1mg/日(12人)を24週間内服した少人数の二重盲検比較試験1)では、2群間に単位面積あたりの毛髪数に有意差(p<0.008)が認められました。副作用は1mg内服群2例に多毛が認められました。女性型脱毛症に対するミノキシジル1mg/日内服(26人)とミノキシジル5% 1日1回外用(26人)を24週間比較した試験2)では、総毛髪密度が内服群で12%、外用群で7.2%増加しましたが、統計学的有意差はありませんでした。副作用は内服群で下肢浮腫4%(1人)、多毛27%(7人)、心拍数の増加6.5% 、外用群では多毛4%(1人)、頭皮の痒み19%(5人)でした。後ろ向きに2469例を解析した症例集積報告3)では、併用療法が行われている症例もあるので有効性を評価できませんが、女性の投与中央値は1.11mg/日で、男性は2.60mg/日でした。副作用は多毛15.1%、立ちくらみ1.7%、浮腫1.3%、頻脈0.9%などでした。ミノキシジル5mg/日を内服した症例集積報告4)では、効果の割合は高いものの副作用の頻度が明らかに上昇しました。

日本皮膚科学会の男性型・女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)では、国内外でミノキシジルの内服が認可されていないことから、行うべきでない(D)との評価となっています。しかし、その後に少量内服の評価が発表されました。すでに国内外でミノキシジル外用育毛剤が発売されているので、通常は内服する必要はなく、より安全で全身の多毛が起こりにくい外用育毛剤を使用すべきです。しかし、被髪頭部に湿疹やアトピー性皮膚炎がある人、製剤に含まれるアルコールに刺激があり外用によりかゆみを生じる人、5%育毛剤の粘性が気になる人、フィナステリドなどとともに内服にそろえたい人、などがミノキシジル内服考慮の対象になると思います。ただし、ミノキシジル本体にアレルギー性接触皮膚炎を起こした人は内服禁忌です。ミノキシジル内服薬は医薬品副作用被害救済制度の対象外で、処方する医療機関、販売元、製造元ともに副作用が起こった時の補償はしてくれません。あくまでも個人の責任での内服となります。当院では処方は行っていません。内服量については、海外報告では男女で内服量に差がありますが、おそらく体重差による効果の違いと思われます。したがって日本人を含むアジア人の場合には1.25mg/日を基準にして、効果がない場合には2.5mg/日に増量するのが適切と思われます。しかし、5mg/日は副作用の観点から内服しないことをお勧めします。主な副作用は全身多毛、顔面・下肢浮腫、起立性低血圧(立ちくらみ)、動悸・頻拍、頭痛などです。副作用を生じた場合には内服を中止してください。なんらかの心疾患がある人は内服すべきではありません。また高齢者も内服を避けるべきでしょう。

1) J Am Acad Dermatol 87: 396-99, 2022.

2) J Am Acad Dermatol 82: 252-253, 2020.

3) J Am Acad Dermatol 84: 1644-1651, 2021.

4) J Am Acad Dermatol 84: 737-746, 2021.