院長ブログ10 リットフーロ®による円形脱毛症の治療実績(2025-2026) | 新宿区西新宿の皮膚科・内科 | 西新宿サテライトクリニック
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院長ブログ10 リットフーロ®による円形脱毛症の治療実績(2025-2026)

JAK阻害薬、リトレシチニブ(リットフーロ®)が発売されて2年半が経過し、治療経験も蓄積されてきました。脱毛面積50%以上、12歳以上で6か月以上脱毛状態が固定した円形脱毛症の人が対象です。類似薬のバリシチニブ(オルミエント®)は15歳以上からですから、12歳以上の若い人がリトレシチニブを内服している印象です。学童児では、自治体からの医療費助成により個人負担はほとんど発生しません。当院での治療実績をまとめてみましたので参考にしてください。リトレシチニブはバリシチニブと同等の治療効果で、安全性は同等以上という印象です。

当院で、2026年1月までにリトレシチニブを内服した人は23名でした(添付資料)。内服の前提条件は、脱毛面積50%以上で、6か月以上固定している12歳以上の円形脱毛症の人です。そのうち、新規にJAK阻害薬を内服した人は16人で、そのうち当院を含め6か月以上経過観察できた14人について解析しました。平均年齢は15.3歳で、成人は2名だけでした。平均観察期間は13.6か月(7-23か月)でした。投与前の平均脱毛面積は91.6%で、脱毛面積100%の人は7人でした。重症度は国際臨床試験における平均脱毛面積90.3%とほぼ同等でした。

 

解析の結果、SALT20達成率(脱毛面積が20%以下になる:なんとか脱毛が隠せる面積)は64%(9/14)で、SALT10(脱毛面積が10%以下)達成率は 50%(7/14)でした。SALT20を達成するのに要した期間は5.8か月でした。また、SALT20を達成した人の固定期間は平均1.7年で、達成できなかった人の固定期間は8.5年で、大きな差がありました。次に、バリシチニブ4mgを内服しても発毛効果が十分でなかった人が、途中でリトレシチニブ50mgに変更するとどうなるか、変更した7人について解析しました。円形脱毛症は季節や年度により病状が自然に変化する疾患なので、前後で2薬剤の効果を比較するのは難しいですが、それを承知の上で、それぞれの薬剤の内服期間が6か月以上あり、変更時の空白期間が短い症例で比較しました。バリシチニブ無効でリトレシチニブに変更し、短期内服で少し効果があり、長期内服でSALT20を達成した人が2人。バリシチニブ無効でリトレシチニブに変更し短期で脱落した人が3人、おそらく無効であったためと予測されます。バリシチニブがやや有効でしたが、リトレシチニブに変更して、短期で副作用が出現し、バリシチニブに戻した人が1人。両薬剤ともやや有効でリトレシチニブを続けている人が1人。以上の結果から、症例は少ないですが、バリシチニブとリトレシチニブの効果はあまり差がないことが推測されます。国際臨床試験1)では、リトレシチニブ50mgカプセル内服24週間後のSALT20(脱毛面積20%以下)達成率は23%(29/124)でした。治療前の平均脱毛面積は90.3%でした。いっぽう、バリシチニブ4mg錠の2つの国際臨床試験の結果2)は以下の通りです。治療前の平均脱毛面積は85%でした。24週間後のSALT20達成率は26.7%(75/281)と28.2%(66/234)でした。さらに36週間後のSALT20達成率は35.2%(99/281)と32.5%(76/234)とでした。残念ながらリトレシチニブは二重盲検比較試験が24週で終了しているため、それ以後の2剤の正確な比較はできません。長期安全試験では、効果不良の参加者が脱落して効果が高めに出る傾向があります。リトレシチニブ50mgカプセルは内服48週後にSALT20達成率40%をやや超える値を達成しています1)。当院の新規内服患者さんのSALT20達成率は64%(9/14)で、国際臨床試験に比較するとかなり好成績でした。その理由としては、当院での平均投与期間が13.6か月と長いこと、固定期間が短い(平均1.7年)学童児が多いことが推測されます。国際臨床試験での治療前脱毛面積はリトレシチニブの方がバリシチニブよりも5%重症なので、それを差し引くと、内服1年後のトレシチニブ50mgカプセルとバリシチニブ4mg錠の効果はほぼ同等と推定されます。

リトレシチニブはJAK阻害薬ですが、JAK1、JAK2を抑制するバリシチニブと異なり、JAK3、TECを抑制します。作用点は異なりますが、作用機序は類似しています。副作用の観点からは、JAK1を抑制しないのは良い点ですが、新たにJAK3、TECを抑制するので、それに伴う副作用がどうなるかが注目点でした。当院でのリトレシチニブの副作用は、ざ瘡や発熱などでした(添付資料)。汎発性帯状疱疹は、バリシチニブからリトレシチニブに切り替えて内服2日後から症状が出始めているので、どちらの薬剤がきっかけなのかは断定できない状況です。症状は治癒しましたが、患者都合で一時終了となりました。同じく、バリシチニブからリトレシチニブに切り替えて1週間以上にわたり下腿の倦怠感が持続したため、自己判断で中止して、バリシチニブ内服に戻した人が1人いました。リトレシチニブの頻度の高い副作用はニキビ、頭痛、上気道炎、毛包炎、上咽頭炎、悪心、じん麻疹、尿路感染症などです。検査値の異常ではALT(GPT), CK(CPK)値の上昇が報告されています1)3)。さらに、頻度は低く重症ではないが、難聴や聴力低下が報告されています。また、皮下出血、鼻出血、歯肉出血などの出血も報告されています1)3)。最近報告された国内市販直後調査の報告(6カ月間、推定408名が内服)では、副作用は58例83件でした。報告の多い症状として、頭痛、上咽頭炎、ざ瘡、倦怠感、悪心があり、重篤な副作用として自律神経ニューロパチー、CKの異常高値が報告されています4)。当院での経験では、重症な副作用や稀な副作用はなく、バリシチニブと同等かそれ以上の安全性と推測されます。学童児が多いということも結果に影響していると思われます。 以上の情報からリトレシチニブ(リットフーロ®)50mgカプセルの使い方を考えてみましょう。12歳から14歳までの小児は選択の余地がなくリトレシチニブの内服です。15歳以上の大人はリトレシチニブ、バリシチニブのどちらを内服しても、ほぼ同等の効果と副作用と推測されます。医療費が3割負担の場合には、薬剤費はリトレシチニブの方3割高くなりますが、高額療養費制度を利用する場合には個人負担は同額です。リトレシチニブ内服で発毛効果が出た人は内服の継続です。バリシチニブの報告では、効果が出た人が内服を中止すると、80%の人で脱毛状態が元にもどったと報告されているからです。リトレシチニブを6か月から1年間内服しても効果が出なかった人は、内服を中止して新たなブレイクスルーを待つしかないと思います。他のJAK阻害薬に変更しても効果は出にくいです。リトレシチニブを内服して、ある程度の効果は出たけれども十分でない人は、そのまま継続するか、15歳以上の人は、2026年後半に効果がやや高いウパダシチニブ(リンヴォック®)が円形脱毛症に適応拡大される予測なので、それを待って変更してもよいかと思います。ただし、副作用の頻度と程度は重くなります。

文献

 1)Lancet 2023; 401: 1518-1529.

 2)Am J Clin Dermatol 2023; 24: 443-451.

 3)ファイザー株式会社資料(2023.6. LIT51N006A)

 4)ファイザー株式会社資料(2024.12.EPV68O012A)

             

                         2026/1/28 西新宿サテライトクリニック 坪井 良治

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