漢方医ブログ⑰ よく用いる漢方薬6 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) | 新宿区西新宿の皮膚科・内科 | 西新宿サテライトクリニック
お知らせ NEWS

漢方医ブログ⑰ よく用いる漢方薬6 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

 半夏瀉心湯は漢方薬の中でも古い時代に創られ、葛根湯と同じく『傷寒論』『金匱要略』という紀元200年頃の古典に登場します。半夏は夏に生える雑草でその塊茎を薬用とします。夏至から11日目を半夏生(はんげしょう)とも呼びますが、7月初めの時期に白い花を咲かせます。制吐作用や胃腸の消化吸収・運動促進、鎮咳去痰などの薬効が知られ、胃腸薬に入っていることが多い生薬です。瀉心とは心(漢方医学的にはみぞおちのあたり)の痞えを「瀉す」すなわち取り除くというというニュアンスであり、これらのことから半夏瀉心湯は胃もたれや嘔気嘔吐下痢など胃腸の不調にひろく応用されます。

 胃腸系の漢方薬はこの薬は胃薬、あちらは腸の薬といった守備範囲が決まっていることが比較的多いですが、半夏瀉心湯は胃にも腸にも使いやすいという特徴があります。例えば胃もたれや胃痛などを起こす機能性ディスペプシア、腹痛や下痢便秘を繰り返す過敏性腸症候群という疾患があります。これらは胃腸機能の不調で起こるのですが、両方同時に起こることもよくあります。こんなとき半夏瀉心湯は一つで胃と腸の両方の症状に対処できる可能性があるわけです。最近では食道の疾患である逆流性食道炎に対する半夏瀉心湯の有効性が臨床試験で証明されました。抗炎症作用に優れ口内炎にもよく効くので口から食道、胃から腸に至るまで、まさにユーティリティープレーヤーの消化器系漢方薬として近年注目株といえるでしょう。

 ただし一点注意すべきは、抗炎症作用の中心を担う黄芩(おうごん)という生薬はまれにアレルギーを起こすことがあります。その場合、空咳や発熱、肝障害などをきたすため、特に飲み始めは一応注意しておきましょう。心配しすぎる必要はありませんが、万一上記の症状などがあったら服用をやめ主治医の先生と相談してください。