水虫は白癬菌というカビによる感染症です。水虫と思って市販薬を塗ってみたが、ちっとも良くならないと思っている人は多いはずです。その大部分は、水虫でないのに水虫薬を使っているからです。まず、正しい診断が大切です。皮膚科クリニックで、足の裏のヒラヒラした皮膚の一部(鱗屑)を取って顕微鏡で調べる検査(直接鏡検)をしてもらいましょう。水虫を早く治すためには、患部も含めて両足の足裏全体、趾間に1日1回、少なくとも1か月間は外用することです。わが国では、水虫薬が効きにくい耐性菌が2-3 %いると言われていますが(院長ブログ28)、とりあえず、どの水虫薬でもよいので治療を始めましょう。次で詳しく述べます。
薬局で買う水虫薬と病院で処方される水虫薬で、効力はそれほど変わりません。それではどうして薬局で買った水虫薬は効かないのでしょうか。その理由は水虫でないからです。足にかゆみや、紅斑(赤み)、鱗屑(皮膚のヒラヒラ)、びらん(ただれ)があると水虫と思いがちですが、全く同じ症状でも湿疹のことがあります。この場合には水虫薬では良くならず、ステロイド外用薬を使う必要があります。詳しくは省略しますが、水虫と似た症状を示す疾患には、足湿疹、異汗性湿疹、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎などがあります。とにかく、まず皮膚科医による臨床診断と顕微鏡検査(直接鏡検)を受けてください。水虫は肉眼で見ただけでは診断できません。正しい診断のもとに治療を開始してください。水虫菌に依らない症状は水虫薬を塗っても良くなりません。また、水虫と診断されても、ほかの病気、例えば湿疹などを合併していることがあります。その場合には、水虫薬を塗ってかゆみなどはなくなっても、鱗屑や踵(かかと)のひび割れ、過角化などは良くなりません。症状によりステロイド外用薬や、皮膚を柔らかくする尿素軟膏などを併用する必要があります。また、第3、4趾間(足ゆびの間)がふやけて(浸軟)、ただれている場合にも、刺激性皮膚炎を合併しているので、水虫薬単独では良くならず、ステロイド外用薬や亜鉛華軟膏など、急性炎症を抑える薬と併用する必要があります。
基本的に水虫薬は1日1回風呂上りに塗ります。そして重要なことは水虫の症状があるところだけでなく、足の裏、趾間、爪など両足全体に十分に塗ります。水虫薬は2週間も使えば症状は軽くなりますが、念のため1か月はきちんと塗りましょう。また、治療が不完全だと、わずかに残った菌が、翌年の夏に再び勢いを盛り返して症状がひどくなるので、その後も予防的に週に1回程度塗り続けておくと、再感染も防げます。 最後にどの水虫薬を塗ると早く治りやすいかについてコメントします。いずれの薬剤もクリーム基剤に抗真菌薬が1%含まれていますから、それぞれの薬剤の最小阻止濃度(MIC)を考えると、いずれの薬剤を使用しても十分に効果があります。現在わが国でよく使われている水虫薬成分には、ルリコナゾール、ラノコナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、リラナフタートなどがあります。耐性菌が最も少なく、抗菌力が強い(最小阻止濃度)のはルリコナゾールとラノコナゾールです。ただし、これら2つの成分はほぼ同一であり、ほかの成分と比較してややかぶれ(接触皮膚炎)が多いので、1-2週間以上塗って、逆に赤みやかゆみが強くなった場合には他の薬剤に変更してください。
2025/10/06西新宿サテライトクリニック 坪井 良治
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