寒くなると乾燥肌やかゆみを訴える患者さんの数が増えてきます。冬を迎えるにあたり注意点をまとめてみましたので参考にしてください。
乾燥肌になる原因には、アトピー性皮膚炎のように体質的に肌が乾燥する、高齢者で皮脂の分泌能が減少する、暖房などにより環境が乾燥する、長い入浴時間や過剰な石鹸洗浄、こすり洗いなどがあります1)。予防するための生活上の注意点には以下のようなポイントがあります。
ポイント①日本人は入浴が大好きですが、世界的にみるとシャワー浴が主流で、沐浴する民族は少ないです。高温での長風呂は皮脂が失われますので、できるだけ風呂はぬるめで短めに、あるいはシャワー浴にしましょう。汗をあまりかかない環境の人は隔日入浴、高齢者の人は週2回程度でよいと思います。東京近郊でアンケート調査2)をしたところ、高齢者施設や病院では平均して週2回の入浴が行われていますが、臭いや感染など特に問題になっていません。
ポイント② 清潔志向による過剰な皮膚の洗浄が悪化要因です。アトピー性皮膚炎の人、高齢者や乾燥肌の人は石鹸・ボディソープを使わないか、デリケートゾーンの洗浄に限定し、その他の部位は木綿のタオルで軽く洗いましょう。顔についても水だけで洗うか、化粧を落す時のクレンジングだけにしましょう。
ポイント③入浴後には保湿剤・保護剤を塗ります。その際、クリームタイプの白い保湿剤(ヒルドイド®など)ではなく、白色ワセリン(プロペト®、サンホワイト®など)やオイル(椿油、オリーブ油)などの油脂系の保護剤の使用をお勧めします。クリームタイプのものは油分が少なく乾燥の強い人には不向きで水で洗うと落ちてしまいます。また、界面活性剤が含まれているので薬効だけでなく皮膚表面のアレルギー抗原も皮膚の中に取り込んでしまう可能性があります。白色ワセリンなどの半透明の保護剤はべたつきますが、少量を手のひらに広げ、それをなでるようにして全身に薄く塗ってください。頭皮には透明なオイルがお勧めです。保護剤を塗るのは入浴の直後は避けて、体温が少し低下して乾燥する前が適切です。体が暖かい時に塗るとかゆみを感じることがあります。
ポイント④衣服は薄着をこころがけ、肌着は必ず木綿で肌に密着しないものがお勧めです。化繊の下着(ヒートテック®など)は保温作用が強いためかゆくなります。神経痛に対しては体を温めます。かゆみに対しては体温を下げるのが効果的です。
ポイント⑤ 室内の湿度を加湿器などで上げましょう。肌の乾燥を軽減できます。
ポイント⑥十分な睡眠を取るようにしましょう。生活が不規則だとかゆみを感じやすくなります。睡眠前のお酒は睡眠の質を下げますので、食事の時に飲むようにしましょう。お風呂は寝る1時間前までには済ませて寝るまでに体温を下げます。寝る直前に運動をしない。また、スマホやテレビの明るい画面を見ないようにして、気分を鎮める時間帯をつくりましょう。寝つきが良くなると、寝床でひっかく行為が減ります。
かゆみが強くなると、ひっかきキズも加わって皮脂欠乏性・搔破性湿疹となります。この場合には治療が必要です。かゆみ止めの内服薬や炎症を抑えるステロイド外用薬、保湿剤・保護剤を処方します。
文献
1)佐伯秀久, ほか(皮脂欠乏症診療の手引き作成委員会). 皮脂欠乏症診療の手引き2021. 日皮会誌131(10); 2255-2270, 2021.
2)岸田功典、ほか. 高齢者の入浴・洗浄回数と皮膚の状態に関する調査・研究. 西日本皮膚80(1); 56-62, 2018.
2024年8月27日 西新宿サテライトクリニック 坪井 良治
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