院長ブログ21 髪はどのくらいの頻度で洗うのが適切か? | 新宿区西新宿の皮膚科・内科 | 西新宿サテライトクリニック
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院長ブログ21 髪はどのくらいの頻度で洗うのが適切か?

 当科は脱毛症を主たる診療領域としているため、患者さんからよく尋ねられる質問です。化粧品各社はスキンケア商品が売れないと困るので、原則的に1日1回洗浄を勧めています。いっぽう私はシャンプーを使用した洗髪は週2-3回が適切と回答しています。どうしても毎日洗いたい人は、湯洗い洗髪とトリートメントをして、シャンプーは週2回程度に抑えることをお勧めしています。その根拠となる臨床試験結果はないのですが、私の経験から、その理由を述べてみたいと思います。 

 歴史的に洗髪回数を見てみると1)、平安時代は年1回、江戸時代は多くても月1回でした。最初は米のとぎ汁が使用されていたようです。1945年以降に銭湯が普及し、シャンプーが発売されることで週1回程度の洗髪となり、1970年以降に家庭内風呂が普及して洗髪回数が週2~3回になり、1990年以降は毎日洗髪する傾向が強くなっています1)。現代でも高所で乾燥しているチベットやアンデスでは3か月に1回程度です。地毛である芸妓さんは週1回の洗髪です。相撲取りも鬢(びん)付け油(すき油)で固定するので週2回程度の洗髪です。日本には水が豊富にあり、温泉浴などの文化もあります。湿度が高く汗をかきやすいので、きれい好きな日本人は、洗浄剤を用いて毎日入浴、洗髪するのが一般化していますが、世界的に見ると普通ではありません。化粧品各社では、洗髪頻度の増加に合わせて、肌にやさしい低刺激性や洗浄力の強くないシャンプーを開発して、洗い過ぎに対応しようとしています。

 私たちの皮膚の表面は、天然保湿因子、細胞間脂質、皮脂腺から分泌される皮脂などによっておおわれ保護されています。これまでは、痒み、臭いの原因となる脂質・蛋白分解産物、汗などは毎日洗ってきれいにしましょう、という化粧品会社のスローガンに沿って、毎日洗っている人が多いと思います。しかし、すでに述べたように、私たちは自分自身が作る保湿成分を持っています。それらを過剰に洗浄剤で除去して乾燥を誘発する必要はないと考えます。

 40名の女性の頭皮を対象にした研究2)によると、シャンプーの後に頭皮の皮脂が元の量にもどるのに1日かかります。部位別では前頭部、頭頂部の分泌は側頭部、後頭部の約2倍で、季節差はあまりないと報告されています2)。つまり、1日2回以上の洗浄剤を使用した洗浄は頭皮の乾燥を誘発します。

 私は高齢入院患者の多い多摩・相模原地域の41病院(療養型病棟、精神科病棟を含む)の病棟責任者(主に看護師長)105名に入浴・洗浄に関するアンケートを実施したことがあります3) 。その結果、入浴・シャワー回数は週2回が55.2%で、次いで週1回が31.4%でした。人手が少なく手が回らないという側面もあるとは思いますが、汗をかきにくい環境の高齢者であれば、週2回程度の入浴・シャワーで、臭いや感染症も含めて問題になっていないと考えられます。日本は湿度が高いので、汗をかく仕事の人は洗浄剤を使わないシャワー浴や湯洗い洗髪が1日1回は必要と思いますが、脱脂する洗浄剤によるシャンプーは週2-3回で十分と考えています。

  さて、ここからは体験をもとにした推測の話になります。なぜ頻回に洗髪すると髪に良くないかの理由です。すでに述べたように、シャンプーにより頻回に脱脂すると髪が痛みます。さらに、高温でのドライヤー、染毛(ヘアカラー)、パーマなどが追い打ちをかけます。いずれもほどほどにしないと髪が傷みます。たとえ話として、「カシミヤやウールのセーターを毎週クリーニングに出す人はいないでしょう」というお話をすると理解していただけることが多いです。洗髪後に油脂を供給するコンディショナー(リンス、トリートメント)の使用も必要です。

 さらに重要なのは頭皮への影響です。毛髪は頭皮の深い部分にある毛球部という場所で作られてせり上がってきますが、頭皮の状態が乾燥して荒れていると作られる毛髪が細く寿命も短くなると推察されます。さらに炎症があると脱毛の原因にもなります。たとえ話でいれば、「鉢植えの花は土壌が良くないと美しい花は咲かない」ということです。私の40年以上の臨床経験から言うと、最近、若い女性の頭髪が細くなっていると感じます。美容師、理容師に尋ねても同様の答えが多いです。昔は黒々太い頭髪の女性が多かったと思います。統計的な裏付けはないのですが、実感です。したがって、洗髪の後は頭皮のケアも大切です。自分の頭皮が油っぽい(油性)と思い込んでいる女性が多いですが、油性と思っている人も実際には頭皮が乾燥している人が多く、乾性のフケを湿性のフケと間違えて、さらに洗髪して症状を悪化させている人も経験します。手を洗った後にハンドクリームを塗るように、洗髪の後には頭皮にも保湿クリーム、できればオイル(椿油、オリーブ油など)を塗ることをお勧めします。

文献

1)髪と頭皮のお手入れの歴史: 花王株式会社ヘアケアサイトhttps://www.kao.com/jp/haircare/history/

2)中村雅子. J Soc Cosmet Chem Jpn 27; 546-549, 1994.

3)岸田功典、ほか. 高齢者の入浴・洗浄回数と皮膚の状態に関する調査・研究. 西日本皮膚80(1); 56-62, 2018. 

                    

                     2024/9/9 西新宿サテライトクリニック 坪井 良治

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