漢方医ブログ㉓ 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) | 新宿区西新宿の皮膚科・内科 | 西新宿サテライトクリニック
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漢方医ブログ㉓ 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

 桂枝加芍薬湯は後漢時代の治療書『傷寒論』に腹部膨満感や腹痛の治療薬として出てくる処方です。現代の医療現場では腹痛や便通異常を中心によく用いられ、とりわけ過敏性腸症候群の漢方治療では第一選択薬とされます。臨床試験データによると特に過敏性腸症候群の下痢型に有効と報告されています。

 桂枝加芍薬湯は、衆方の祖(さまざまな漢方薬の大元となる処方という意味)と言われる桂枝湯という漢方薬から発展したものです。つまり元々の桂枝湯の構成生薬である桂枝・芍薬・甘草・大棗・生姜に、さらに芍薬を追加して1.5倍量(4g→6g)にしたものが桂枝加芍薬湯なのです。でもたったそれだけの違いで、そんなに効果の違いがあるのだろうかと思いませんか?それが大ありなのです。桂枝湯は元々風邪薬で発汗解熱や頭痛・のぼせなどに効果があり、桂枝(シナモン)の作用のためどちらかというとその効き目は頭やのど、皮膚など体の表面に向かいます。ところが芍薬を増やすと今度はその効果が体の内側により多くあらわれ、腹部内蔵の痛みをとったり血流を改善させたりするようになるのです。昔の漢方医が経験的に編み出した生薬の組み合わせや比率の妙には驚かされるばかりです。

 桂枝加芍薬湯からさらに発展した漢方薬もまたいろいろあります、桂枝加芍薬湯ファミリーといってもよいでしょう。少しご紹介すると、桂枝加芍薬大黄湯は桂枝加芍薬湯に大黄という下剤を加えたもので、桂枝加芍薬湯の症状があり便秘が強いケースに用います。小建中湯は桂枝加芍薬湯に膠飴(水あめ)を加えたもので、体力的に衰えた漢方医学的に虚証の患者さんや小児のケースに用いるといった具合です。こうしたファミリーを含めた桂枝加芍薬湯によって、ありふれた症状である腹痛に幅広く対応できるものと考えられます。