漢方医ブログ㉕ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) | 新宿区西新宿の皮膚科・内科 | 西新宿サテライトクリニック
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漢方医ブログ㉕ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)


婦人科3大処方といわれる漢方薬の2番目にご紹介するのは当帰芍薬散です。桂枝茯苓丸と同様に3世紀の『金匱要略』を出典とし、もっとも古い時代からある漢方薬のひとつです。

当帰芍薬散は、妊娠や出産に伴うトラブルの漢方治療を述べた婦人妊娠病編に記載があるのも桂枝茯苓丸と同様ですが、その条文には妊娠中に起きる腹痛に当帰芍薬散がよいと書かれています。したがって当帰芍薬散は、妊娠中のトラブルを防ぐ安胎薬と位置付けられています。当帰と芍薬という2つの生薬は腹痛に効果があるとされており、このことから当帰芍薬散という処方名になったと考えられます。また桂枝茯苓丸は丸薬でしたが、当帰芍薬散の散は散剤であることを示しています。つまり元来は粉薬の剤型でした。腹痛など急性の諸症状に対して、すぐ飲める散剤を頓服的に用いることが理にかなっていたのではないかと推測されます。

当帰芍薬散はその構成生薬から、漢方医学的には血虚と水滞に対応する漢方薬です。血虚は貧血や栄養不足を、水滞は水分バランスの乱れ(具体的にはむくみなど)を表します。したがって、当帰芍薬散は色白で貧血気味、やせ形、冷え症でむくみがちな女性の月経や妊娠に関連した諸症状に応用されるということになります。これは桂枝茯苓丸が体格の良い、漢方医学で実証と呼ばれる人向けなのと対照的で、現代の医療現場では当帰芍薬散は虚証の患者さんに、桂枝茯苓丸は実証の患者さんに、それぞれ使い分けて処方されることが多くなっています。似たような症状であっても体格や体質によって漢方薬を使い分けるのは、現代医学と異なる漢方医学ならではの特質と思います。

当帰芍薬散は不妊治療の補助療法としても応用できるなど、桂枝茯苓丸とともに婦人科領域を中心に広く活用される重要な漢方薬です。