高脂血症(高コレステロール血症、高中性脂肪血症) | 新宿区西新宿の皮膚科・内科 | 西新宿サテライトクリニック
高脂血症
(高コレステロール血症、高中性脂肪血症)
Hyperlipidemia
(hypercholesterolemia, hypertriglyceridemia)

高脂血症(高コレステロール血症、高中性脂肪血症)Hyperlipidemia (hypercholesterolemia, hypertriglyceridemia)

健診でコレステロールが高いと指摘されました。放っておくと何か困ることになるのですか?

血液中のコレステロールが高い状態(特に LDLコレステロール:いわゆる“悪玉コレステロール”)を長期間放置すると、”内皮細胞”という血管の最内層下に貯まることで、動脈硬化が進行します。動脈硬化とは、文字通り血管がしなやかさを失い、硬く、狭く、流れにくくなることであり、最終的に詰まったり(梗塞)、破れたり(出血)すると、生命に関わる重大な障害を起こします。

LDLコレステロールが高いことと最も関係の深い病気は狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患であり、特に一度でも病気を発症した方の再発予防(これを2次予防と呼びます)においては、”Lower is better(低ければ低いほど良い)”がズバリ当てはまることが多くの疫学研究で明らかにされています。

最近で最もホットな話題は、LDLコレステロールと認知症との関係です。2025/4月に韓国からの報告で明らかにされたのは、『LDLコレステロール値低値群(<70)では、高値群(≧130)に比べ、全認知症リスク、アルツハイマー病発症リスクが26~28%低下すること』でした。同様の報告は各国からも続いているのが現状で、発症後の治療が限定されてしまう認知症診療において、コレステロールヘの介入が発症予防に役立つかもしれないという、新たな光明が見出されたと言っても過言ではないでしょう。

以上をまとめると、血液中のコレステロールが高い状態を放置することは、将来の虚血性心疾患、脳卒中、認知症の発症を高める可能性を意味することにご留意下さい。

コレステロール高値を放置すると将来の動脈硬化性疾患が増えることは理解できましたが、あまりに漠然としたことで、自分のこととしてピンときません。もう少し具体的な話にはならないのでしょうか?

全ての病気がいつ頃どのように発症するかを正確に述べることは不可能ですが、過去に蓄積された膨大なデータから将来の疾患発症リスクを一定の期間にわたって予想することは、ある程度可能です。

その1つが、日本動脈硬化学会が公開・提供する、一般向けの動脈硬化性疾患発症予測ツール(アプリ)である「コレリスくん(これりすくん)」(※) です。このアプリでは、年齢、性別、喫煙の有無、血圧、LDLコレステロール値などを入力することで、10年以内の動脈硬化性疾患(心筋梗塞など)の発症リスクを計算でき、より具体的なイメージを持って療養に臨むことが期待できます。

(※) https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool/ 

動脈硬化の診療は血液中のLDLコレステロールを測ることだけなのでしょうか?

最も重要な治療ターゲットが血中LDLコレステロール値であることは間違いありませんが、高いから、下がったからと言って自覚症状には何ら変化がなく、患者さんにとって治療効果や治療の必然性を感ずることが難しいことは確かであると考えます。当院では、頸動脈の超音波検査(血管壁のプラークを描出し評価を行う)や、脈波伝搬速度(血管壁の硬度を測り、血管年齢を計算する)といった非侵襲検査(体への負担がない検査)を適宜行うことで、自らの血管の状態を把握し、豊かなイメージを共有して治療に臨んで頂けるよう工夫を行っています。

中性脂肪が高いことも動脈硬化の進展につながりますか?

中性脂肪とは、食事から摂った脂質や糖質が体温維持など生命活動のエネルギーとして使われた後、余剰分として再合成され、肝臓・脂肪組織に蓄えられたものです。運動や空腹でエネルギーが不足すると、血液中に放出され、筋肉などで消費されます。

血液中の中性脂肪が高い状態ではLDLコレステロールが小型で高密度なタイプ(超悪玉コレステロール)に変化することで、より血管壁に侵入しやすく、酸化されやすくなり、結果として強い動脈硬化を引き起こします。また、中性脂肪が増えると血管の脂質を回収するHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が減少し、血管壁内にLDLコレステロールがたまりやすくなります。

私は81歳で、先日、血液中のコレステロールが高いと言われました。脳卒中や狭心症などを起こしたことはありませんが、それでも薬剤治療は必要ですか? 

高齢者の心血管疾患一次予防(狭心症や脳卒中を未だ起こしたことのない方に対して、発症そのものを防ぐための対策)における脂質低下療法の有効性を検証した複数の臨床試験が実施されています。

  • PROSPER試験(対象は70~82歳):スタチン治療により冠動脈疾患死亡率が24%減少することが示され、認知機能や身体機能への顕著な障害は認められませんでした。
  • EWTOPIA 75試験(対象は75歳以上):コレステロール吸収阻害薬(エゼチミブ)治療により、主要心イベント(命に関わる重要な心臓・血管の病気をまとめた評価指標)が34%減少しました。一方、85歳を超える患者では効果が減弱することも報告されました。
  • 同じテーマによる複数の研究を“まとめて再分析”し、より信頼性の高い結論を出すメタ解析という手法で得られた結論は、『75歳以上の患者さんで、LDLコレステロールを39mg/dL下げた時の効果は、心血管死亡を15%低下、心筋梗塞を20%低下、脳卒中を27%低下させる』というものでした。

Lancet. 2020 Nov 10;396(10263):1637–1643.

加齢は動脈硬化と心血管疾患の修正不可能な危険因子であり、その有病率は時間とともに増加していきます。高齢者に対しても、健康的なライフスタイルの優先と修正可能な危険因子への対処は大変重要であると考えられ、スタチンを初めとした内服療法は、年齢のみを理由に中止すべきではないものと考えます。